先月(2017年6月)茨城県牛久市の『う奈ぎ道場 同源亭』へお邪魔して、道場主・鹿野雄二さんの料理と人柄に感銘を受けた。

牛久 う奈ぎ道場同源亭 ~素敵なお庭を愛でながらいただく至高の焼きに大鰻足~

鹿野さんによれば、『う奈ぎ道場 同源亭』はお庭の景色を愛でながらいただくアドバンテージはあるが、会話と調理風景を楽しみながら出来立てをいただくのは、松戸『う奈ぎ道場』が適しているということだった。

鹿野さんは、現在、松戸と牛久の『う奈ぎ道場』を掛け持ちされているので、いつかチャンスがあれば松戸にお邪魔したいと思っていた。すると、鹿野さんが松戸にいらっしゃる日を教えてくださり、思いの外早く、念願の叶う日がやって来た。

北松戸駅から徒歩15分ほどの住宅街に『う奈ぎ道場』はある。
ここは、鹿野さんのご実家でもあり、以前はお父様が寿司店をなさっていたということである。

後で聞いたのだが『う奈ぎ道場』の看板は、鹿野さんご自身で彫られたという。

自分も好奇心旺盛なためにすぐに手を出すきらいがある。敵わないと悟れば、リスペクトも増すという都合の良い性格だ。
しかし、鹿野さんはプロ並みに仕上げてしまう凄さがある。

一枚板のカウンターの向こうは、調理場が一望出来て、正にオープンキッチンだ。
会話を楽しみながら料理をLIVE感覚でいただく。最高の贅沢であろう。

飲み物は、真夏日になったこともあり、ビールをお願いする。
銀河高原ビールのボトルを冷えたグラスに注がれる。

まず、鹿野さんが玉子焼き器を巧みに操り、出されたのは〈う巻〉
冷やしてあったおしぼり、濡れ布巾に包まれていた箸とともにカウンターの上へ。

だし巻玉子と同じ柔らかさの鰻は食感の妙を感じる。
鰻は焼かずに炊いて、このバランスを作り出すそうだ。
玉子、だし、鰻の旨みが渾然一体となり、口に広がる。

次に鹿野さんがひいた一番だしと二番だしを味わせていただく。
一番だしは芳醇な香りと澄んだ味。
二番だしは鰹の旨みがガツンとくる。

「このだしを覚えておいて、椀種でどう変化するかを楽しんでください。」
と出されたのは〈鱧のお椀〉

昆布の旨みがまずやって来て、鱧を噛むと正に口福の極致を感じる。

鹿野さんの〈鱧椀〉をいただいて、30数年前のある出来事を思い出した。
食通で知られる日本画家の先生に大阪・法善寺近くの小さな割烹で〈鱧椀〉をご馳走になった。
その時、先生は
「お椀は日本料理の華なんや。料理人の才覚を表すものやといってもええ。せやから、店の名前はどうでもええからお椀の美味い店を探しなはれ!」
とおっしゃった。

ここで鹿野さんお勧めの日本酒に切り替える。

〈肝焼き〉
ひと口すると鮎のような風味が広がる。
丁寧な下処理によってここまで美味くなるものなのか。

〈う寿司〉
以前『う奈ぎ道場』で開催していた「本物マルシェ」で販売されていたのを見て食べてみたかった品。
日本の食文化をコラボした〈う寿司〉は不味い訳はない。
しかし、美味しさを追及すると、鰻、タレ、酢飯のバランスが如何に大切かを知る。

〈白焼〉
おろしたての本山葵、塩と梅醤油。
梅醤油は、梅を醤油に漬けて3年寝かせたものだという。

皮目を焦げる寸前まで焼いているために、鰻の旨みが閉じ込められて何もつけずとも美味い〈白焼〉

梅醤油をつけて食べてみる。
鰻と梅の食べ合わせが悪いといったのは、何処のどいつだと言いたくなる。

ここで〆の〈うな重〉のために土鍋ご飯が火にかかる。

〈うざく〉
鹿野さんのこだわりは、ずばり胡瓜。
切る厚さ、たて塩に漬ける加減を地焼き鰻との食感のバランスを計算しつくしている。
最後の一滴まで飲めてしまう合わせ酢も美味いっ!

間近で鰻を焼く姿に見惚れてしまう。

丑の日の けむり窓より 昇天す

五所 平之助

丑の日前だし、目の前だし、昇天せずにいられない。

蒲焼の焼きを追及した鰻を土鍋で炊き立てのご飯の上にのせた〈うな重〉のお出まし。

肉汁ならぬ鰻汁を閉じ込めるように炭火の力を最大限に活かした焼きの技。
炊き立てのご飯と一緒に頬張れば、思わず「日本人に生まれて良かった!」と鰻面の笑みがこぼれる。

「料理とは、食材との対話から生まれる足し算、引き算」
という鹿野さんの言葉は料理とともに腑に落ちた。

料理人それぞれが、食材の声を聞いて、その時の最高の料理をお客様に提供していると思う。
その瞬間を目の前で拝見しながら料理をいただけるのは最高のご馳走なのだと実感した。

本日『う奈ぎ道場』道場主・鹿野雄二さんの食の黄金律を間近で見て、そのひとつの極みを体験できたことは、私にとって幸せ鰻点のひと時であった。

 

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