宮崎県は、鹿児島県、愛知県に次ぐ鰻養殖生産量第3位の全国屈指の養鰻県である。

また、1994年に宮崎県、市町村その他関係機関・団体の協力の下「宮崎県内水面振興センター」を設立し

  • 県内地場産業としての養鰻業振興を目指したシラスウナギの採捕供給
  • 水産動植物の増殖を図るためアユ、ウナギ等の放流
  • 水産動植物の違法な採捕防止及び安全操業のための警戒警備

等を主な事業として行っている。

さらに宮崎県は10月1日から12月31日まで「うなぎの採捕制限」を設け、内水面漁業協同組合では、うなぎ資源の回復のため「うなぎの採捕制限」に加えて、毎年10月から翌年3月までの期間、うなぎを禁漁として資源保護にも努めている。

そのような鰻先進県の県都・宮崎市には、国産うなぎの総合商社「大森淡水」の「養殖」「流通」「加工」「外食」の4事業を集約した施設『うなぎの里』がある。

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個人でも見学が可能か問い合わせると、許可してくださったので訪問させていただいた。

まず、本社事務所でご挨拶。

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鰻のゆるキャラヒーロー「うなレンジャー」もお出迎えしてくれるのだ。

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バイヤーや入社希望者用の会社案内ビデオを見せていただき、いざ出発。

飼料室

まず、鰻の餌から見学。

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大森淡水の鰻は、大手飼料メーカーとタイアップしオリジナル配合飼料を作り、餌の原材料からこだわりぬいて育てているそうだ。

大森淡水では「ハーブ育ち大森屋」を与えている。この餌を与えると免疫機能が高まり健康に育つそうだ。
この餌で育ったハーブうなぎは、食べるときにうなぎ特有の川魚の臭みが少なく、良質の脂肪がついて、あっさりした口当たりになるという。

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「ハーブ育ち大森屋」の匂いを嗅がせてもらった。配合割合は3%ということだが、たしかにハーブの香りがする。

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この器械を使って粉末の餌を練って与えている。

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養鰻池

養鰻池には、何機かの水車が回っている。
川を遡るがごとく泳いでもらう為に水流を作るのと、水の中に酸素を溶け込ませることが主な役割。
汲み上げた井戸水を鰻の育ちやすい温度に加温しているが、水車で攪拌することで対流現象を起こして池の温度を一定に保つという。

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この金網の中に餌をまくそうだ。
餌やりの時間ではないので、鰻の群がっている写真はなし。

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養鰻池にかける黒いシートも意味がある。
日除けだけではなく、池の中の藻の発生度合いを調節するのにも利用するそうだ。池の中の藻は少な過ぎても多すぎても鰻の育成に影響するとのことだ。

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鰻の池入れ前の養鰻池。
砂利が敷き詰められている。ここから土づくりをするそうだ。

鰻は砂泥を好むのでその環境を整えることから始めるのが、宮崎の養鰻の特徴ということである。
養鰻池の水が澄んでいないと感じた方もいるかと思う。「水清くして魚住まず」のことわざ通りで、いかに自然と似た環境で鰻を育てるかがポイントなのだ。

養鰻池の作り方、育成方法は産地によって違うところもあるということだ。
鹿児島や三河、静岡などの養鰻池も見学してみたいと思うのだった。

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話を聞いていると、生産者の皆さんを大事にしているのが熱く伝わってきたので
「お客さんと生産者どちらが大事ですか?」と意地悪な質問をすると
「お客さんはもちろん大事ですが、究極の選択をすれば生産者ですね。良い鰻がなければ商売になりませんから。」
と苦笑いをされてしまった。

流通

鰻問屋は、生産地問屋と消費地問屋に分けられる。
生産地問屋は、養鰻場から活鰻を仕入れ、全国の専門店や卸売業者へ供給する。
消費地問屋は、消費地の卸売業者である。

大森淡水は、もちろん生産地問屋に分類される。
自社や提携している養鰻場の活鰻を選別・計量して保管し、出荷する作業を行っている。

選別・計量

熟練の技で選別していく光景は見とれてしまう。

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保管

いわゆる立て場なのだが、どの養鰻場のどの池からいつ池上げされたかが、わかるように厳重に管理されている。
大量のポールが積み上げられているのは壮観ですらある。

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出荷場

この場所で出荷作業をするそうだ。
袋に活鰻と酸素、氷を入れて、段ボールに入れて全国へ出荷している。出荷した活鰻は24時間以内に目的地に到着する。

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加工場

加工場の入口に安全管理の注意書きが貼ってある。
特別に許可された見学者は口頭でも注意を受ける。

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加工場内には、見学者専用のコースがあり、そちらへ向かう。
作業員は、エアーシャワーなどで除菌して作業室へ入るという。

割き室

清潔さなどの安全対策をされた作業員によって、活鰻が手早く割かれていく。
作業員の前にある有色(ここでは緑色)の下敷きで養鰻池やロットが一目でわかるようになっている。
時間なども管理されているので、問題が発生した場合は、どのロットでどの作業員の仕事かがまで特定できる仕組みだという。

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割か方は、出荷先によって無頭背開き、有頭腹開き、有頭背開きをそれぞれする。

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投入室

ここでもどのロットがいつ投入したかがわかる仕組み。

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白焼き

炭火とガスバーナーで焼く。炭火焼きの工程では、焼きむらがでないように熟練した職人が並び替え行う。

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蒸し

白焼きの最終チェックを経て、蒸し機へ

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蒲焼

じっくりタレをしみ込ませるためにタレをつけ、焼き、またタレをつけて焼くという工程を繰り返す。
鰻が流れてくる間隔が空いているのは、違うロットの混入を防ぐためだという。

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ここでも焼きむらが出ないように熟練の職人が加減を見ながら場所を入れ替えたりする。

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タレつけ焼きの工程を4回繰り返す。
最後は粘度の強いタレに浸すのは、専門店で使うようなタレだけで急速冷凍すると鰻が乾燥して旨味が飛んでしまうのを防ぐためだという。スーパーなどで買う蒲焼のタレの粘度が強いのはそのためなのかと納得する。

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粘度の強いタレは重さがあるのでカサ増しすることになってしまう。
カサ増しを防ぐためと美味しさの追求で粘度の強いタレを付けた後にエアーをかけてもう一度焼くという。

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試食・検査

ロットごとに池上げ後、製造途中、製品完成後と計3回の試食検査を行うそうだ。
出荷前の段階ではさらに微生物検査も行い、安心と美味しさの基準をクリアしたものだけが発送できる仕組みだそうだ。

計量・包装

計量・包装の工程では、鰻を触ってもよい作業員、鰻には触れず梱包だけをする作業員に厳密に分けて作業をする。

梱包した際は、産地、品種の他に生産者も顔写真入りで明記する。
万が一問題があった時の追跡調査が可能な体制をとっている。

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発送

発送用の段ボールに詰めて、冷凍して全国の百貨店や量販店へ発送される。

レストラン事業

大森淡水のブランド「鰻楽」は鰻を楽しむというコンセプトと創業者・大森 楽氏の名前から名付けられたという。
その「鰻楽」の名を冠した食事処が『うなぎ処 鰻楽』

うなぎ大好きの実食レポートはこちらから『うなぎの里 うなぎ処 鰻楽』


 

実際に養鰻場から加工の現場まで見学した感想は、生産者とともに安心安全で美味しい鰻を作り出そうと意欲である。自分が好んで使う「鰻愛」と言い換えても良いかもしれない。本当に貴重な体験をさせていただいた。

最後に一個人に見学を許可していただいた株式会社 大森淡水と案内してくださった野口総務課長に心から感謝の意を述べてこの項を終わりにします。