八重洲 はし本 〜土用丼・専門店の本気度〜

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土用の丑の日の行事食

夏の土用の丑の日に食べるものというと、うなぎが好物でない方も一番に浮かんでくるのは「うなぎ」であろう。

夏の土用の丑の日に鰻を食べる習慣についての由来には諸説あるが、平賀源内が発案したという説がよく知られている。

最も一般的な話としては、夏にうなぎの売れ行きが悪いうなぎ屋が、平賀源内の元に相談に赴いた。源内は「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、そのうなぎ屋は大変繁盛した。その後、他のうなぎ屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日にうなぎを食べる風習が定着した、というものである。

一説によれば「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という風習があったとされ、うなぎ以外には瓜、梅干、うどん、うさぎ、馬肉(うま)、牛肉(うし)などを食する習慣もあったようだ。

鰻専門店の鰻と牛

『鰻 はし本』四代目・橋本正平さんは、次々と画期的な試みにチャレンジしている方である。

店で使う活鰻は、同店のフラッグシップブランド「泰正オーガニック鰻」を鹿児島大隅の泰正養鰻から直引きしている。
泰正オーガニック鰻が入荷しない時は取引先の鰻問屋から好みの養鰻場を指名して買い付けるというこだわりようだ。
使う魚は鰻をはじめ川魚に特化しているのも特筆すべき点である。
また、川魚以外の食材もオーガニックにこだわり、極力自家調理にこだわりを見せる。

その橋本正平さんが、江戸から続く「土用期間には“う”のつくものを食し滋養を得よ。」の考えに基づき、〈うとうの丼〉を土用の間だけ限定で提供するという。

『鰻 はし本』こだわりの鰻の蒲焼に神戸で3代続く『ゆさか精肉店』がこの丼だけのために〈ミスジ・サンカク・バラ〉を特別にブレンドした牛肉と有機玉葱で作る究極の〈鰻と牛の丼〉

これは食べに行かねばならない。

川の滋味

昼、夜 限定5食のみの〈土用丼〉
すでに夜は予約で満席とのことで昼の部を目指して出陣する。店の前に10時半に到着。一番乗りだ。
開店準備をしていた橋本さんに「早っ!」と言われながら11時の開店を待つ。
待つのもうなぎ屋を訪れる醍醐味のひとつなのだ。

席に案内されて、まず出されたのが〈鯉のお椀〉
橋本さんが、再び鯉と向き合う時間を作り「鯉と塩」で仕立てたお椀ということだ。

鯉は泥臭いというイメージを覆す逸品。
鯉の旨みだけを凝縮し、川の香りだけをほんのり残す。
そして、牛蒡とオクラの風味が良いアクセントになっている。

川の滋味が溢れている。
土用蜆があるのだから鯉を土用に使うのも有だ。
〈鯉する土用椀〉というネーミングは如何だろうか。

カミさんと2人で行って、〈土用丼〉限定5食のうち2つをいただくのはさすがに気が引ける。
もう一つは〈鰻重〉をお願した。
お椀は〈赤だし〉

〈鰻重〉に使用の鰻は宮崎佐土原「和匠うなぎ」の新仔ということだ。
すっきりした脂にねっとり感は新仔らしい新仔である。

『鰻 はし本』さんへ伺うたびにタレが美味くなっているように感じる。
ベテラン職人さんの
「タレは年数でなく、どれだけ良い鰻をくぐらせたかだ。」
という言葉を思い出す。

〈土用丼〉を食す

有機野菜が美味しい〈サラダ〉
器の模様が鰻のようでニッコリ。

ついに登場 〈土用丼〉

橋本さんが教えてくれた、この日の〈土用丼〉のスペックは以下の通り

  • 鰻: 宮崎 青木養鰻場 新仔3.5P
  • 牛: 熊本県菊池市産「和王」 共励会最優秀賞 ミスジ/サンカク/バラ/ヤリを ゆさか精肉店が独自ブレンド
  • 玉葱:北海道産有機
  • マスタード:大分県香々地産(自家漬)
  • 紅生姜:有機梅酢(自家漬)

これだけの食材を使い、手間をかけて、税別3,700円。
素人ながら原価率が心配になる。

さまざまな部位の牛肉の食感を楽しめて、牛本来の旨みに有機玉葱の旨さのデュエット。
そこに太物の新仔鰻のボリューミーでふわとろな食感と爽やかな脂の旨みとタレの旨みも加わり、ひとつの丼の中で旨みのカルテットを奏でる。

自家製のマスタード、紅生姜は味の変化や箸休めにもってこい。

高スペックの〈土用丼〉は、ポールポジションから一気にゴールへ駆け抜けた。
鰻専門店の本気度を余すところなく、鰻喫させていただいた。

〈土用丼〉は、秋の土用に再会できるのか、はたまた来年か。
橋本さんの斬新な企画に今後も期待したい。

 

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