福岡の『うな善』さんのFacebookページを拝見するとすんごく美味しそうな白焼きがカバー写真になっています。
いつか福岡に行く機会があったらお邪魔したいと常々思っていました。
今回、福岡行きが決まってすぐに予約の電話をすると女性の優しそうな声が返ってきます。
とても感じが良く、丁寧な対応で電話の向こうから笑顔も見えるようでした。
予約の瞬間から気分はうなぎ昇りでした。
そして、待ちに待った訪問の日がやってきました。
最寄り駅の福岡市営地下鉄七隈線・渡辺通駅からわくわくしながらお店へ向かいます。
念願のお店とご対面です。
「鰻売り切れました」の看板がかかっています。
やはり、予約必須のようです。
そして「鰻の旬は冬」の貼り紙があります。
すでに高まっていた期待が暖簾をくぐる前にさらに膨らみます。
外観も店内も「街のうなぎ屋さん」の趣です。
最大、小上がり8席、テーブル4席の小さなお店ですが、コロナ禍の影響で小上がり1卓とテーブル1卓に縮小しているとのことでますます予約が取れにくい状態になっているようです。
現在の店主・2代目の福田州盛さんは「お断りするのが、大変心苦しい。」とおっしゃっていました。
お店は2代目と先代の奥様である女将さん、電話に出られた2代目の妹さんの親子3人で切り盛りされています。
アットホームな雰囲気はこのためですね。
こちらの焼き方の特徴は、裂いたうなぎ1尾を切らずに竹串を打って焼いていきます。
鉄串を使うと熱の通りは良い反面、焼きあまや焼き過ぎが出るリスクを減らすために竹串なのだそうです。
その後、食べやすい大きさにカットして、火の入れ方を見極めながら仕上げていくのです。
熱源も焼きむらが出ないように一定した火力のガスを使っているそうです。
しかも鰻の品質が基準に達しない場合は店を閉めるそうで、今夏も2日お休みしたそうです。
「まだまだ焼きの技術が未熟ですから」と謙遜されていましたが…。
取引しているうなぎ問屋さんとの信頼関係があってのことですね。
全ては、2代目の目指す究極を求めてのことです。
予約時にお願いしたのは、白焼きと蒲焼ご飯、肝吸、つけ物がついた〈特上〉です。
まず、白焼きからです。
白焼き
待ってました。
これがFacebookページを見て、憧れていた〈白焼〉です。
自家製の柚子胡椒に山葵とすだち、生姜、ワカメ、胡瓜などが添えられています。
まず、柚子胡椒を乗せていただきます。
とに角、熱々です。
ホクホク言いながら頬張るとうなぎが甘いです。
女将さんが「すだちは皮目に絞ってください。」とおっしゃるので、言う通りにしていただきます。
柚子胡椒をつけたときとは違ったうなぎの甘みが引き出されます。
白焼に添え物をあしらい、自家製ポン酢をたらすと極上のうざくに変身します。
2代目にお伝えするとうな善では、鰻をつぶしてしっかりと混ぜて食べるそうです。
あぁ、最後の1切れだったぁ。
「また、うな善にお出で」といううなぎ様の声が聞こえてくるようです。
大皿の白焼を食べ終わるとさらに2切れ運ばれてきました。
「熱いからきをつけてお召し上がりください。」と女将さんがおっしゃいます。
先程よりもさらに熱々カリカリに焼き上げられています。
白焼、未体験ゾーンへ突入です。
熱々を口に入れると口福としか言いようがありません。
2代目によれば、1尾いっぺんに出すと最後の方は冷めてしまう。
お酒を飲んだり、お話が弾むとなおさらのことです。
じゃあ、いっぺんに出さずにお客様の食べ具合を見計らって、2回にわけて焼いてお出しればよいとの簡単な結論だとおっしゃいます。
そうは言ってもなかなかできることではありません。
コロンブスの卵的発想は、究極を目指す者のみに降りてくる知恵かもしれません。
さほど、焦げ目は目立ちませんがしっかりと火が入り、肉汁ならぬ鰻汁ともいうべき脂が閉じ込められて口の中に旨み、甘みが広がります。
至福の白焼でした。
うなぎ丼うな善では、ご飯の上に蒲焼を乗せる「丼」とご飯と蒲焼は別々に提供される「重」から選べます。
今回は、蒲焼をご飯の上に乗せる「丼」でお願いしました。
うな善の蒲焼は、白入れしたうなぎを温めたタレの中をくぐらせて仕上げます。
これによって、独特な味わいと食感になるのです。
タレは中まで染みていないので、身側はタレの美味しさ、皮側はうなぎ自体の旨みを感じます。
あたかもタレとうなぎがデュエットを奏でているようです。
フィードバック
白焼の器を下げるときに山葵だけは下げないでもらいました。
すると、女将さんが「うちの蒲焼には山葵もあいますよ。」とおっしゃていたので、やってみました。
うなぎとタレと山葵の美味しい三重奏です。
最期の1切に追いダレをかけていただきます。
こちらは、ご飯も美味しいのです。
その訳は、お客様がいらっしゃる時間に合わせて炊き上げているとのことでした。
熱々のうなぎを美味しく食べてもらう配慮ですね。
うなぎ丼が運ばれてきたときに、女将さんが
「ご飯は冷めるといけないので少なめにしてあります。遠慮なくおかわりしてください。」とおっしゃていました。
追いダレをかけようとしていると
また「ご飯が足りなければ一口でも足しますよ。」と声をかけてくれます。
お料理は、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、と言います。
お江戸のうなぎ屋さんでも蒲焼を銅壺に入れて冷めないようにしているお店もございます。
※参考:うなぎと楽しむ器 銅壺(うなぎ喜代川5代目ブログ)
しかし、焼き方、焼くタイミングを工夫して熱いうなぎをいただけるお店は初体験でした。
それは2代目の究極をを求める熱さが所以でしょう。
そして、雰囲気、接客は温かいのです。
女将さん、妹さんが2代目の熱さを包み込むことで温もりを感じさせるのかもしれません。
いつも描いている「美味鰻福」ですが、今回の福の字はうな善の福田家の皆さんへ感謝を込めて描きました。
そして、私のお腹にも気持ちにも福が宿りました。
ご馳走さまでした。