敬天愛鰻 ~東高円寺 小満津~

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かれこれ5年ほど前でしょうか?
とある雑誌のうなぎ特集で原稿を依頼されたときの担当編集者と次のようなやりとりがありました。

東高円寺の小満津さん
行ったことあります?

まだ、ないんですよ。

すごく美味しかったので是非いらしてください。

機会を作って行ってみますね。

コミ障のきらいがあるのでなかなか予約電話が出来ずに
ずいぶん月日が経ってしまいましたが、ようやく伺うことが出来ました。

小満津のホームページには
24時間お電話対応いたします。
営業時間外の方が、ゆっくりお話できます。

東高円寺小満津ご予約・アクセス

とあったので思い切って伺う数週間前の朝7時に電話をしました。

電話に出られたのは女将さんでしょうか?
早朝にもかかわらず丁寧な対応に好感度が上がって当日がとても楽しみになりました。

最寄りの東京メトロ丸の内線・東高円寺駅から青梅街道を新宿方面へ歩きます。

およそ4分ほど歩くと良い香りが漂ってきました。

店の前をうろうろしていると女将さんが顔を出して店内へ招き入れてくれました。

棚にさり気なく飾ってある『ミシュランガイド』

そう小満津は、ミシュランガイド東京2017にビブグルマンとして掲載されて以来
ミシュランガイド東京2021まで5年連続で掲載され続けているのです。

カーテンなどで仕切られた半個室風のお席が3つ。
小満津は、1日限定6組の完全予約制。
コロナ禍以前より予約時間も他のお客様となるべくかぶらないようにして、お客様がゆっくりくつろいで召し上がれるようにしているそうです。

貴重な時間を一人で
申し訳ないないですm(__)m

女将さん
女将さん

いえいえ。
うちはお一人でコースを召し上がるお客様が多いんですよ。

女将さんの気遣いの言葉に救われました。お言葉に甘えて楽しまさせていただきます。

テーブルの上には、本日予約したコースメニューと今月のおすすめのお酒メニューがあります。

お酒もお願いしたい気持ちもありましたが
お酒が弱いので、初めてのお店で粗相するといけないので今回は見送りました。

うなぎに合うワインも取り揃えているということですよ。

まず、ご主人が仕込みをした本日の串を持って来てくれました。

どれも美味しそうで
丁寧な仕事が一目でわかりますね!

よろしくお願いします。

大将
大将

それでは焼かせていただきます。

そう言って、ご主人は早速仕事に取り掛かります。

見惚れしまう仕事ぶりです。

小満津コースコースは、まず〈お通し三点盛り〉からです。

お通し三点盛り

かぶと煮

うなぎの頭をこれでもか、と軟らかく煮てあります。
お酒のアテに最高の逸品。

独活とニラ 味噌ダレ

食感を残しつつ軟らかく仕上げた旬の独活にニラ。
手作りの味噌ダレがよく合います。

塩トマト

軟らかまいうーなトマトの下には、ブロッコリーが隠れてました。

骨せんべい

思いのほか作る手間のかかる骨せんべい。
完璧に水分をとばしてサクッサクです。
歯の悪い私も食べられました(^^)

うまき

ほんのり甘いだし巻き玉子に包まれたうなぎ様は幸せを呼ぶような気さえします。

うなぎと玉子は相性抜群。間違いありません。

大晦日に小満津では、常連のお客様用に〈うまき〉を用意するそうです。
賞味期限は3日間。
お買い求めになったお客様は、年越しに半分、元旦に半分食べる方が多いとか。
 黄金色のうまきが並ぶ大晦日の店内は壮観です。
常連のお客さまとの恒例行事です。

予約時にお願いしておいたコース外のうなぎ串が焼きあがりました。

うなぎ串左から ●なかおち ●肝臓と腎臓 ●きも ●ひれ巻き 

なかおち
他店では〈ばら〉〈ばら身〉〈白ばら〉などと呼ばれています。
鮪のなかおち、牛のカルビのような部位です。美味しくないはずがありません。
中骨についた身を丁寧にそいで作ります。

肝臓と腎臓
うなぎ串専門店でも売り切れ必至の希少部位の肝臓=うなぎのレバーに
さらに希少部位の腎臓が一串になった究極のうなぎ串。
腎臓のほろ苦さは癖になりそうです。

〈きも〉
一般的な肝焼きはうなぎの内臓を全て使用していますが
肝臓と腎臓、えごさのもとになる苦玉を除く部位を使用しているようです。
極めて上品なお味でした。

ひれ巻き
ひれにはコラーゲンがたっぷり。女子におすすめの一串です。

ひれの塩焼き

ひれを素揚げして塩をしたものはいただいたことがありますが、
 塩焼きしたものは初めていただきました。
 美味い!の一言です。

串をいただいたところで
女将さんがポット入り〈ほうじ茶〉を持ってきてくれました。

口の中がさっぱりしました。
ここから佳境に入るコースの仕切り直しににくい心遣いですね。

白焼き(半尾)

お皿まで熱々の〈白焼き〉は、見るからに軟らかそうです。

最初は何もつけずにいただきます。

箸上げが困難なくらい軟らかです。
口に入れれば、とろけてしまいます。
そして、口中にうなぎの旨みが広がっていきます。

続いて、山葵と岩塩で

山葵の爽やかさが旨みを引き立てくれます。

山椒と岩塩で

香り高い山椒とうなぎの旨みがデュエットを奏でます。
山葵、山椒、岩塩とも質の高いもののため、つけ過ぎ注意です!
上の写真はビジュアル映えを狙ったために量多めです。
これだけ軟らかく仕上げるためには、裂き、串打ちの技術が高い証です!
かつて京橋にあった小満津二代目は「天下無敵」といわれた名人でした。
現在のご主人は二代目の孫にあたり、名人のDNAを感じずにはいられません。

うなぎの蒸し汁のスープ

うなぎを蒸すときに落ちたうなぎの旨味成分を凝縮させ、さらにうなぎの旨味を引き出す工夫を凝らして、生姜と塩などで味を整えているそうです。

うなぎの滋味があふれるスープです。
生姜の効果なのか?和なのにエスニックの香りも感じます。
癒されました。美味い!しか言葉が出ません。

うざく

うざく小満津は、丁寧な仕事と優しい味付けが特徴ですが
〈うざく〉も例外ではありません。

薄切りの胡瓜と蒲焼の食感の違いは口福です。
飲めちゃう合わせ酢もお気に入りです。

ぬか漬け

女将さんが〈うな重〉が出る前に〈ぬか漬け〉を持ってきてくれました。
ちょうどいい塩梅のつかり具合です。
珍しいコンニャクのぬか漬けも美味です。

小満津のぬか漬けを食べていて、池波正太郎の『男の作法の』の一節を思い出しました。

おこうこぐらいで酒飲んでね、
焼き上がりをゆっくり待つのが
うまいわけですよ、うなぎが。

池波正太郎『男の作法』より

コース料理を食べている最中ですが、小満津のぬか漬けは一献傾けながらうなぎの焼き上がりを待つにはもってこいだと思わずにいられません。

うな重うな重の到着です。

うな重パッカーン♪

お重の蓋を開けるとこれでもかと良い香りが鼻腔を刺激します。
重厚で美しい漆の重箱です。

大切に使い続けられて、たくさんのお客様の「美味しかった」の声が聞こえてくるようです。
ふんわりとろけるようなうなぎ様です。

あるうなぎ屋さんがうなぎの個性を女性に例えていましたが
このうな重を見て、美魔女というフレーズが頭に浮かびました。
その心は、熟練の技術に支えられて、優しいタレを纏いとろける魅惑のうなぎ。

〈肝吸い〉も出汁の旨味を存分に引き出していて、美味いです。

中には焼き肝、自分としてはポイント高しです。

デザートデザートは〈抹茶白玉〉か〈アイスクリーム苺ソース〉を選べますが
美味しいうなぎに胸が熱いので、クールダウンのために
〈アイスクリーム苺ソース〉を選びました。

以上、小満津コースとうなぎ串
素晴らしいお料理の数々、十分に堪能させていただきました。

美味鰻福でございます。ご馳走さまでした。

ご馳走になった後は、ご主人、女将さんとうなぎ談義に花を咲かせました。

ご主人の前田治雄さんは、いかにも職人という趣で優しい眼差しが印象的でした。
女将さんの前田恭子さんは、明るく楽しい方でお話ししていると時の経つのを忘れてしまいます。
小島政二郎は著書「食いしん坊」の中で京橋・小満津を「天下無敵」と称賛したといいます。
自分は、僭越ながら東高円寺・小満津をへ「敬天愛鰻」の言葉を贈りたいと思います。
先人の知恵や技術を敬い研鑽し、鰻を愛しお客様に最幸の時間が提供してくれるからです。
お二人に鰻愛をたくさんいただきました。

お腹も心も鰻福のひと時をありがとうございました。
感謝いっぱいでございます。

東高円寺小満津東京、東高円寺のうなぎ屋「小満津(こまつ)」は先代「京橋小満津」の志を受け継ぐ老舗です。当たり前の仕事を当たり前に手を抜かず、江戸前職人の技術をこの地で継承しています。凛として受け継ぐ味、小満津のうなぎを是非ご賞味ください。

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