2024年4月 東京メトロ・永田町駅3番出口を出てすぐの場所にうなぎ専門店が新規オープンした。
東京都心だから江戸前の流儀の店かと思いきや地焼きの店だという。
その頃、私は2024年6月20日に講談社より出版する『読めばもっとおいしくなるうなぎ大全』の執筆中で、本書の中にも新たなうなぎのムーブメントとして名古屋の名店が東京に出店したり、東京の若手うなぎ職人が地焼きに挑戦している様子を書いている。
どんなうなぎ専門店なのか、興味をそそられていた。その店の名前は『鰻 北白川』
広々としたお洒落な雰囲気の店内には、個室も完備されていて様々利用シーンに対応出来る。
メニューを拝見すると「鰻重地焼き」「せいろ蒸し」とある。
福岡うなぎが東京進出かと思い、料理長の長久保稔さんにお話を伺った。
鰻 北白川のオーナーは、小倉田舎庵のうなぎをリスペクトしていて、東京で再現させたいという夢があったそうだ。長久保料理長は、埼玉の老舗で修業の後に東京、神奈川の名店でも研鑽を積み、田舎庵3代目店主の緒方弘さんの薫陶も受けていたので、料理長に抜擢されたということだ。
まず「白焼」
山葵、醤油、塩とあるが、何もつけずともうなぎの味を楽しめる素材の良さと焼きの技術の高さがわかる。
産地にこだわらずにその時で味の良い、地焼きに適した皮の柔らかな活鰻を仕入れているそうだ。
地焼き鰻重をいただくと、一般的な地焼きがワイルド系とするならば、洗練された品の良さを感じた。
長久保さんによれば、緒方さんの”うなぎに火を食わせる”という焼き方とたれの材料であるみりんは角谷文次郎商店の三河三州みりん、醤油は国産丸大豆醤油を使用することは踏襲しつつ、関東の人に合わせ甘さを抑えているということだった。
福岡柳川や久留米などの「せいろ蒸し」は、こってり柔らかな蒲焼にもちもちご飯の組合わせがオーソドックスである。対して、北白川のせいろ蒸しは、地焼き蒲焼の良さを活かしたエレガントな味わい。
器にとって追いだれをすると好みの味に早変わり。
そして、ここの地焼きに合ったご飯が美味い。この日は、信州佐久の米ということだ。
〆のほうじ茶もオーナーこだわりの加賀棒茶を使用している。
長久保さんの言葉で印象的だったのは「地焼きは、奥が深い」
かつて関東風の職人だった長久保さんは、地焼きも綺麗に焼こうとしていたそうだ。しかし、それでは地焼きは美味しく焼けない。緒方さんの薫陶を胸に日々精進だという。
次に伺った時は、さらに美味しい予感しかしない。楽しみなうなぎ屋がまたひとつ出来た!