JR常磐緩行線「亀有駅」北口を出てみずほ銀行に沿って歩き牛角系(株式会社レインズ)のカレーショップ「カレキチ」の角を左折、「サンホーム」という不動産屋さんの角を右折すると亀有北口中通り商店街(らぶえいど)に入ります。200mほど行った左側に店舗写真でもわかるとおりのレトロなお店が出現します。それが「うな辰」です。
暖簾をくぐると右手がカウンター(4席)、左手が小上がり(テーブル2卓×2 )、奥にも座敷があるようですがきっと大人数のお客さんが来た時だけ使うのでしょう。
メニューもうな重、きも焼(200円)、おしん香(300円)とビールに酒のみです。うな重はおしん香・吸物付きで大きさによって1300円、1500円、2000円の3種類。壁にはサイン色紙がたくさん、しかもほとんど茶色に変わっています。判別できるのは藤村俊二さん、斉藤清六さん・・・。
ご主人の立沢正夫さん(71)は千住にある江戸時代から続く川魚問屋「鮒与」に勤めた後、昭和40年に「うな辰」を開業したそうです。「40年経ってしまうと好きなことだからあっと言う間のような気がするけれど人間同じ事を40年はなかなか続かないね。」とご主人。
この言葉と同じように経験した者だけが知る深さを感じさせるうな重。中はとろけるように柔らかく、外は余分な水分がなくパリッとした焼き上がり。ガスグリルで焼かれているのを知らなければ炭火焼と言われてもわからない仕上りです。
ときどきうな重を食べていて「このうな重はさめても美味しい」と感じることがあります。「うな辰」のうな重も正にそれです。醤油と味醂に少量の砂糖だけでつくられたきりっとしたタレも美味しいし、ご飯もご主人の出身地・埼玉吉川産のお米自体も美味しいし、炊き方もやや硬めで私好みです。
無理をせず、出来る範囲の労力は惜しまず、当たり前のことを当たり前にやり続ける大事さを「うな辰」は教えてくれているような気がします。今も一緒にお店をしている末息子の達雄さん(43)にこのことはきっと受け継がれていくのでしょう。