1日の最高気温が35℃以上の日のことを「猛暑日」となって久しいが年々暑さが増しているような気がする。子供が小さい頃は、毎年海水浴へ行っていたが、ここしばらく夏には海へ行っていない。そうだ。久しぶりに海水浴へ行こう。
早起きをしてやって来たのは、旭市の矢指ヶ浦海水浴場。同じ九十九里浜の海水浴場でも成東や片貝に比べて人出が少ない。沖合にテトラポットがあり、波も静かで水平線が一望できる。海に浸かっていると何となくデドックスしたような気分になるから不思議だ。
海に浸かっていて、ニッポンウナギは、この太平洋のはるか南のマリアナ諸島近海で産卵をして、広大な海を戻って来るのかとセンチメンタルになるが、そこはうなぎ好き。やはり、昼は鰻を食おう。
以前、ブランド養殖鰻の坂東太郎で有名な忠平のホームページに「全てのうなぎ料理に坂東太郎を使用しているお店」が掲載してあり、確か旭市のうなぎ屋も1軒載っていてた記憶がある。調べると忠平の取引店に旭市の『川千家』があった。せっかく、旭まで来たのだから今日の昼は川千家で鰻だ。
暖簾をくぐると左側はカウンター席で右側には小上がりで衝立で仕切られて座卓が2つ、その奥にも上がり座敷がありやはり衝立で仕切られて座卓が2つ並んでる。私たちは奥の上がり座敷に案内された。衝立の向こうには、宴会の最中で、天ぷらや鯉の洗いを肴に大いに盛り上がっている。バリバリの方言が飛び交っているので、地元の人の暑気払いのようだ。
メニューを見ると「蒲焼、白焼は蒸焼と地焼をお選びいただけます。」とあるではないか?!これは食べ比べてみなくては!
吸物は、肝吸い、鶉の卵の吸物が選べてプラス150円で鯉こくにも出来る。
うな重・特上を地焼で松を蒸焼でお願いする。
まずは生ビールで喉を潤す。お通しはサービスの枝豆。
川千家の屋号いえば、フーテンの寅さんの生まれ故郷である葛飾・柴又は帝釈天の参道に店を構える川千家だ。何か関係があるか?店に方に聞いてみるとこちらの先代が50年ほど前に暖簾分けされたそうだ。
特上は鰻が1尾半。
香ばしくて良い香り。外はサクサクしていて中はふんわりで地焼の美味しさが楽しめる。名古屋へ行ってから地焼マニアになりつつあるのが自分でも可笑しい。
食べ始めはタレの醤油が勝っているかと感じたが、食べ進むとじんわり甘さがやってくる。江戸前風の醤油と味醂のタレで焼いた特徴なのだろうか?
ふんわりとろけるような口当たりは、正統派の江戸前風蒲焼き。先代から柴又の川千家の味を引き継いでいるのか、川千家の暖簾の名に恥じない心意気だろうか?ブランド養殖鰻の坂東太郎を使用しているので本家筋よりもむしろ上を行く気もする。
焦げ目がわりとあり、鰻の香りも立っているので炭火焼きかと?確認したところ、炭火ではないとのこと。炭火焼き風のグリラーを使用しているのか、坂東太郎の威力かは定かではない。
肝吸いは、ワカメ入りで磯の香りがする。海の近くのうなぎ屋らしいアレンジだと勝手に思う。
鯉こくは、鯉の旨味はあるが泥臭さはなく、とても美味。夏の土用は、ファミレスでも鰻を出す店は多くなるが、鯉料理というと川魚専門店でなければなかかな食べられない。
150円増しなら鯉こくのチョイスありだと思う。別注でも420円だから両方味わうのもいいかもしれない。
鯉のあらいも700円とリーズナブルで提供されている。また、蒲焼、鯉のあらい、鯉こくがいっしょに味わえる松定食もある。
帰るときには、ほぼ席が埋まっていた。数年前に国道沿いから移転したということだが、地元の人には愛されている店のようだ。今日食べた鰻は坂東太郎か確認したところ「お召し上がりいただいたのも含めて全て坂東太郎です。」との答えだった。競合の激しい地域と違い殊更にブランドを主唱することはしないらしい。
店の裏手の駐車場へ向かう途中、勝手口の脇で立て屋を発見。鰻は、立て込みといって流水をかけることで、ドロ臭さが取れ、本来の味が引き出されるようにする。そういう作業を当たり前に客の見えないところでやっている。
江戸時代から続く老舗の暖簾分けで自店も半世紀も続いている老舗である。しかも全てブランド養殖鰻を使用している。宣伝材料には事欠かない。しかし、それをぜずに出来ることを出来るだけやっているように思える良い店だと感じた。