不忍通りを歩いていると千駄木4丁目の信号の近くで「うな重 3,000 うな丼1,500」というメニューが出ている店がとても気になった。すでに空腹は満たされているので一旦は店の前を通り過ぎたが、どうしても気になるので戻ってしまった。『鳥清』という店名から焼鳥屋と思ったが、ふぐの調理が出来る旨の札が下がっている。思い切って店に入ることにする。
引き戸を開け、店に入ると先客はカウンターに座っている若い女性二人。若い職人が焼鳥を焼いている。しかも炭火である。
「うな丼だけでもいただけますか?」と声をかけると「30~40分お待たせしますがよろしいですか?」かまわないことを伝えカウンター席に腰をおろす。
店内は入って右にカウンター席が6席で左側に4人掛けのテーブルが3つ、奥の小上がりが1卓といったこじんまりとした客席。
カウンターの向こうでうなぎを裂き始め、串を打っている。そして、炭火の上にうなぎの串をのせる。思いもかけず、裂きたての炭火焼きうなぎが食べられるのだ。嬉しいではないか!
先客の女性たちは鱧ちり、鱧と松茸のどびんむしなど鱧料理でポンシュを楽しんでいるようだ。カウンターの向こうに貼ってあるお勧めにはくりからや鰻ざく、鰻まきなどもあり、知らずに良い店に入ったようだ。
30分ほど蒸し器で蒸されたうなぎが再び炭火の上に乗る。下から小ぶりのステンレスの寸胴を取り出すのが見えた。焼鳥用のタレは焼台のかたわらにあったが、うなぎのタレは専用のものを使うらしい。炭火で焼かれる蒲焼の香ばしさが鼻腔をくすぐる。焼いているところを写真に撮ることをお願いすると快諾してくれたのでシャッターを切るがちょうどうなぎを返すことろでイマイチの写真なのが残念だ。
ちょうど40分でうな丼が運ばれた。調理の一部始終が見られたので待った気がしない。
外はカリッと仕上げられ、中はフワッとした江戸前の王道をいく蒲焼きである。タレはやや甘めだがちょうどよくしみて美味い。ご飯も粒がたっていて美味しいコメによい塩梅にタレがかけられている。
吸物は三つ葉を散らしただけのシンプルなものだが良い鰹節で出汁をとっているのがわかる。胡瓜と人参の糠漬けも美味い。
親子二世代の夫婦で店をまわしているようだが、この日は主に若主人が調理をしていた。
若主人の話によるとお祖父さんはうなぎを扱っていたようだが、去年からうなぎ問屋と縁があって再開したということだ。うなぎは主に三河産ということだが問屋に良いものを持ってきてもらうとのことだった。話し始めると気さくで人柄も腕も良い若主人だった。
専門店ではなくても美味いうなぎが食べられる良い店があることを再確認して、満たされた身分で帰途についた。