甲府のうなぎ屋さんをググってみると
「創業百余年 うなぎ一筋頑に味を守り続ける」
という文章が載った店がヒットした。
『若荒井』という店である。
定休日:毎週水曜日(祭日は営業いたします)とある。行くのは、水曜日だが祭日である。シルバーウィークで5連休なので休みがイレギュラーかもしれないので、電話で確認をする。
感じの良い女性が出て、営業しているとのことだ。
甲府の繁華街でも昔からの店舗が残る「ペルメ桜町」というエリアにある。
店前の通りを挟んだはす向かいに数台停められる駐車場があり、車を停めて店に向かう。
店内は、広い。
左手にカウンター席が10席。右手は小上がりで8人座れる座卓が3卓。左奥には4人掛けのテーブルが4卓。
入口付近には階段もあるので2階にも席があるようだ。
1人なのでカウンター席に座る。
感じの良い女性が、おしぼり、お茶の入った急須、湯のみとメニューを持ってきてくれた。
うな丼は売り切れとのことなので「うな重(3,100円)」をお願いする。
待っている間、店のパンフレットを見る。
店の歴史が詳しく書かれており興味深い。
30分ほどして、うな重が到着。
肉厚の鰻にふっくらと蒸しが入り、皮目はパリッと焼かれている。
香ばしいのもポイントを上げる。
鰻の旨味が感じられる醤油と味醂だけのさっぱりしたタレだ。
江戸前の技法を代々継承しているのだと思われる。
帰りがけに4代目・現店主の妹さんにお話を伺った。
パンフレットを見た旨を伝えると
「だいぶ前に作ったので…」とはにかまれる。
「井伏鱒二の小説にお店が登場と書いてありますが、何という小説ですか?私は『山椒魚』ぐらいしか読んでいないので…。」
「私も山椒魚しか読んだことがなくて、小説の題名は知らないのですよ。」
とても正直で好感が持てる。
「東京の老舗に似ている味ですね。私の好みの鰻です。」
と言うと
「ありがとうございます。近くのホテルに泊まられた東京のお客様にも同じことをおっしゃられて…。兄がとても喜びます。」
嬉しそうな笑顔が印象に残る。
最近は宴席なども少なくなり、鰻の価格も高騰してメニューの品数も減らしたそうだ。
どこのうなぎ屋さんも厳しい環境で頑張っているようだ。
ネットで評価され、もてはやされる店ではなくても丁寧な仕事をする鰻職人さんはいるのだ。そういう店に出会えるととても嬉しい気持ちになる。
110年以上の歴史をさらに延ばしていってほしいと願う。
鰻は、日本の大切な食文化なのだから…。