一味亭FBページの投稿に いいね!をしていると一味亭の若である西山加三喜さんからメッセージをいただいた。これをきっかけに何度かやり取りをさせてもらうことになる。
加三喜さんは、お父様の下で修業をしている若き鰻職人さんで鰻愛がとても伝わってくる方。加三喜さんの奥様で一味亭の若女将・千晴さんともTwitterつながっていたご縁で寒の土用一の丑にかこつけてお邪魔することにした。
一味亭Twitterで見た「ヒレ焼き」は絶対に食べてみたい!
鰻屋でも珍しい『ヒレ焼き』!ただいま仕込み中です(^^) pic.twitter.com/Au1aax5y82
— 一味亭(西山千晴) (@ichimitei) 2016, 1月 11
せっかくだから「ヒレ焼き」が入っているコースをお願いしようと一味亭のホームページを見ると「一味御膳」の中に鰻前菜としてヒレ焼き、かぶと焼き、骨煎餅が入っている。コースの中のお造りを「う巻き」に蒲焼御飯をうな重に変えてもらうようにお願いをして予約をさせてもらう。話ができるようにとランチタイム終了前の13:30頃に時間をとってくださった。
当日は、一昨日の雪とは打って変わって快晴だが、風が冷たい。
東武東上線・ふじみ野駅西口を出て、店に向かう。2つ目の信号を右に曲がり、さらに2つ目の信号を左折すると「うなぎ蒲焼」のノボリが何本も立っているのが見える。
想像していた以上に立派な店構えに少々ビビリ気味(^^ゞ
エントランスもお洒落な雰囲気
店内に入るとと女将と若女将が出迎えてくれ、左奥の掘り炬燵の席に案内してくた。
お茶とおしぼりを持ってきてくれた女将の西山三智子さんと図らずもうなぎ談義になってしまった。
その中で印象に残ったのは、女将が嫁いできたばかりの頃の話。
朝、店の掃除をしていると、どこからか?キーンと良い音が響いてくるのだそうだ。
音源を確かめるとご主人が鰻を割くを割くときに出る音なのを確かめる。
しかし、無心で鰻を割いているご主人は気がつかなかったそうだ。
後に大きな鰻店の割き方の職人さんに割くときの音のことを聞くと鰻は綺麗に割けるが鰻割きの出刃が傷みやすいので割く技術と刃を研ぐ技術の両方が揃わないと出来ないと聞いてビックリしたとのことだった。
明るく楽しく鰻の話をする女将さん。30過ぎの息子さんがいるとは思えないほど若く美しく見えたのは、鰻の効力なのだろう?!
窓の外の池には錦鯉も泳いでいる素敵なお席。
「鰻前菜」の登場。
「かぶと焼き」
「骨煎餅」
どちらも自分で作ってみたからわかるのだが、とても手間のかかる料理なのだ。
かぶとは、圧力釜で丁寧にじっくり蒸さないと骨まで食べられない。
鰻の骨も血や残った内臓を綺麗に洗うのが手間がかかるのだ。
「ヒレ焼き」
これが今日の目当てのひとつ。
外はパリッと中はジューシーな仕上がりで鰻足、鰻足(^-^)v
「う巻き」
甘さ控えめのふんわりした玉子焼きは、中の蒲焼が引き立つ良いお味。
鰻のタレをつけて食べるとまた違った美味しさが味わえる。
「鯉の白扇揚げ」
ふんわりカリッと揚げてあり、鯉の旨味が感じられる。
川魚が苦手な人も美味しく食べられるはず
生姜がアクセントになった優しい味の「うざく」
熱々の「茶碗蒸し」をいただいて、お食事になる。
若女将・西山千晴さんがうな重のセットを運んできてくれる。
テーブルに配膳しながら蓋を開けるシーンのうなパカ動画の話になる。
「お重の蓋を開けるときはワクワクしますよね♡」
明るく元気な若女将も相当なうなぎ好きらしい(笑)
若女将の見ている前で動画を撮った。
香ばしさが半端ない!
5Pサイズの1尾つけ。味の来ている鰻を活かす醤油と甘味のバランスの良いタレだと感じる。
皮はパリッとしてふっくらである。
ここまで香ばしさを出すのは何か秘訣があるのだろうか?
うな重を堪能していると若の西山加三喜さんが来てくれた。
メッセンジャーのやり取りで感じていたように真面目な好青年だ。名店でも後継者がいないために閉店してしまう店も少なくない。彼のような後継者が出てくれるのは、うなぎ好きとしてもありがたいことだ。
話していると優しさの中に秘めた鰻魂を感じる。
昔のように頑固な職人さんではなく、優しさと鰻愛、鰻魂を併せ持つ若い職人さんが今後のトレンドなのかもしれないと感じる。
水菓子をいただいて「一味御膳」のひと通り。
大鰻足のお料理であった。
ご馳走様と手を合わせていると
何と!当代のご主人・西山一夫さんが来てくださった。この時点で14時半。中休みの時間なので恐縮する。
せっかくだからと前に座ってくださり、うなぎ談義がはじまった。
浦和の老舗で修業された先をお聞きすると『中村家』さんだという。
蒲焼をいただいた時に辛口のタレで有名な『中村家』さんだけはないな、と思っていたのでビックリだ。
昔のことだから修業といっても手取り足取りで教えることなどなかったのだろう。
修業から戻った時、店は三芳町の川越街道沿いにあり、お客は上りは都内から下りは高崎から来ていたそうだ。また、当時の店はカウンター越しにお客と話が出来たそうで、試行錯誤しながらタレも理想に近づけていき、「醤油と味醂が仲良くする具合」に出来たのが今のタレだという。
割き方も活きの良い鰻がおとなしく割く方法が女将さんが聞いた音が出る割きというわけだ。
焼き方については「身を焦がさずに脂を焦がす」のが極意だそうだ。落ちた脂の煙が香ばしさが鰻にまとってあの香ばしさになるのかと納得する。
ご主人もうなぎの話をしているととても良い笑顔になる。
そのことをいうと「食べるのも料理するのも鰻がすきなんだよなぁ」と言う。
一味亭の皆さんは、大のうなぎ好きなのだ!
以前は、鰻をどうしたら余すことなく美味しく食べてもらえるかを追求していて、うなぎの刺身なども作ったことがあるほど研究熱心な方でもある。
「いろいろ試してみたけど究極の鰻料理はうな重だと思う。」という意見には共感を覚えた。
また、鰻の完全養殖に話が及ぶと「もうちょっとのとろろまで来ている気がするだよね。」と完全養殖に期待感をにじませていたのは全国の鰻店に共通する思いだろう。
たくさん、たくさん、うなぎの話をさせていただき、気がつけば話始めて2時間近くが経過していた。
恐縮していると「今はなかなかお客さんと話す機会がないので、楽しかった。」と言ってくださったのが救いだ。
迷惑ついでに立て場を見せていただく。
活鰻は、鹿児島まで行き、これはと思う養鰻場から仕入れを基本としているというこだわりだ。
良い井戸があったのも移転のきっかけになったそうだ。
席も自分がいただいた掘り炬燵式の席の他に仕切りのあるテーブル席
カウンター席
他に個室もあって、様々なシチュエーションで利用できる。
鰻面の笑みの一味亭の皆さん
立派な建物でお祝い会席のお店の印象が強かったが、一味亭さんは生粋のうなぎ屋さんであることが行ってみてわかった。
自分が子供の頃の宴席の〆はうな重だった。鰻はハレの日食べ物でもある。その伝統を絶やすまいとする姿勢が「鰻・祝会席」に込められている。
普段使いでも平日の「鰻ランチ」は1,600円(税別)もある。うな重も2枚のせならば2,700円(税別)とうなぎ屋さんとしては気軽に利用できる。
鰻福で大鰻足の「鰻好きによる 鰻好きのための鰻店」だった!