先月(2016年2月)の初めに老舗鰻店『つきじ宮川本廛』にお勤めの西村淳司さんと東京・平井の『うなぎ魚政』へご一緒した時に西村さんが嬉しいことに「来月も鰻を食べに行きませんか?」と誘ってくれた。もちろん二つ返事で頷く。
すると「所沢に尊敬する大先輩が1年半前に店をオープンさせて、行ってみたいんです。あの先輩の店なら将来独立するときにきっと参考になると思うんです。」とニコニコしながら言う。こちらまでワクワクしてくる^^
当日、都合がつく鰻友も行くことになり、総勢5名で西武新宿線・新所沢駅近くの『こだわり食材 鈴』さんへお邪魔した。
店内に入るとレトロな雰囲気を醸し出しつつモダンな装飾。
ここにも店主のこだわりが伺える。
カウンター席越しに見える調理場では、店主の鈴木幸男さんが料理の最後の追い込みに入っている。
許可を得て撮影するが、レンズ越しにも凄腕職人オーラが漂っている。
5名になったので西村さんが奥の個室を押さえておいてくれた。
なまこ壁風の奥が個室になっている。
個室には前菜が用意されていたので、銘々席に着く。
先付けになるのかなぁ?
浅利のヌタ風にじゃが芋ースの白和え風、中には筍、菜の花。季節の桜をあしらっている。
手をかけただけに美味さのハーモニー♪
お凌ぎにあたるのだろうか?
鰻と魚の宝石箱♪
向付
『鈴』では冷凍物は一切使わないそうだ。
この日は、九州産の美味い刺身
焼物
うなぎ白焼
味が濃い鰻です(^-^)
我儘言って塩をもらって食べちゃいました。
仕事が一段落した鈴木さんが来てくださった。
いらしたときは、料理もさることながら鈴木さんの話がこの日の最大のご馳走だとは誰も知る由がなかった。
鈴木さんは、南千住の尾花をはじめ東京の名だたる鰻店で仕事をなさった方だった。
うなぎ好きな人にはカリスマ的な職人さんの名前がポンポンと出てくる。
自分などは耳が鰻ではなくダンボになってしまった(^^ゞ
20代にして髭の殿下こと三笠宮寛仁親王に「あなたの鰻は美味しかった。」とお言葉を賜った凄腕なのだ。
若手職人の西村さんがいたこともあり、これからの鰻職人の世界を憂い、どうすべきか?!という話もされていた。
鰻職人不足は言われて久しいが、鈴木さんによれば後進を育てる人材も不足しているとのことだった。
鈴木さんのような極めた方たちがまだまだお元気で指導に当たってほしいと願うとともに、西村さんはじめ交流のある鰻福会には若手の職人さんも参加しているので皆さん大きく伸びてほしいと思う。
日本の大切な食文化の継承であると同時に自分たちうなぎ好きがいつまでも美味しい鰻をたべられるように…
地鶏焼き
エイヒレの一夜干し
お新香
手の込んだ料理に素材を活かした料理。一見ありふれたように見える料理も手を全く抜かない。
しかも材料さえあれば、どんな料理でも作ってしまうという。
鈴木さんは「出来ないというのが悔しいから」と意地っ張りのようなことをいうが、出来てしまう実力があってのことだ。
深夜営業はしていないが、リアル深夜食堂のようなのである。
〆のうな丼は、4.5Pサイズの1尾つけ(松)をご飯少な目でお願いした。
陶器の丼によよる提供で温かなご飯とともにいただける。
タレは開業するときに鰻蒲焼10Kg分を投入して、厳選した味醂と醤油で作ったそうだ。
キリっとした中にほのかな旨味を感じるタレ。かといって鰻の旨味を殺さない絶妙さには感嘆する。
お弟子さんが作ってもこのレベルなのだから何をかいわんやだと思う。
鈴木さんの料理を食べ、話を聞いていると昔ながらの職人さんといるようだ。
鰻店でいえば、浅草・雷門の色川のオヤジさん。
「昔なんて、古いって言いてぇのか?」と天国から叱られそうだが、時代は変わっても普遍的なものがあると思う。
そんな匂いのする店は居心地が良く、開宴から5時間が過ぎようとしていた。
女将さんにお願いをして、記念写真を撮ってもらい、お開きとなったが、誰とはなく
「素面で鈴木さんが焼いたうな丼を食べたいね。」と鈴での再会を確認した。