自分が子供の頃、自由が丘から連想するのは
読売ジャイアンツで活躍していた王貞治さんが「自由が丘・亀屋万年堂のナボナはお菓子のホームラン王です。」とナレーションする1967年から放送されていたナボナのCMである。
当時から自由が丘は、ハイソサエティなイメージがある。それは、今も変わらないだろう。
その自由が丘駅北口からすぐのところに『ほさかや』がある。
この外観だけを見れば、昭和の下町で撮った写真だといわれても疑いは沸かないだろう。
しかし、ここは現在の自由が丘なのである。
それもそのはずで『ほさかや』は1949年頃の創業というから東京のうなぎ串焼きの店としては老舗の部類なのだ。
日曜日は、ランチがなく16:00からの営業だ。
店の前で開店を待っていると、オープン10分前には常連客とおぼしき人々が集まりだす。
店内は、入口右手に炭の焼き台があり、細長いコの字型カウンター席のみ。
中も呑兵衛の聖地を思わせる雰囲気だ。
メニューはシンプル。
ランチタイムにはうな丼にうな重があり、夜は蒲焼・大、小にうなぎ串焼きが5種類。
他にうなぎを使ったつまみ類が数点。
カウンターの中を行き来するお姉さまをつかまえて、ビールと串焼きひと通りをお願いする。
ビールとお通しのキャベツの漬物がさっと出される。
タレ焼きのうなぎ串焼き4種が到着。
「うなぎきも焼」「うなぎからくり焼」「うなぎえり焼」「うなぎかぶと焼」
「うなぎ塩焼」
ビールをもう1本追加して「煮こごり」を頼む。
鰻のいろいろな部位が入っていて、楽しい。
ついでにさっぱりと「うざく」
安価な鰻のつまみを気取らずに食べて呑めるのは嬉しい限りだ。
〆は「うなぎ茶漬」
鰻の脂と旨味が出汁に溶けて、美味いっ!
他のうなぎ串焼きの店では「くりから焼」と称するが、ここでは「からくり焼」という。
帰りしなにうな串を焼いているオヤジさんに謂れを聞いてみるが
「店によって呼び方はいろいろあるからねぇ。」
蘊蓄を語らず、飄々としているのもうなぎ屋のオヤジらしい。
お洒落でハイソな街で昭和のノスタルジーに浸れるうなぎ串焼き店『ほさかや』は貴重な店のひとつである。