日本最大級の消費地問屋『鯉平』見学

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鰻を扱う問屋は、生産地問屋と消費地問屋に分けられる。 生産地問屋は、養鰻場から活鰻を仕入れ、全国の専門店や卸売業者へ供給する。消費地問屋は、消費地の卸売業者で主に専門店へ供給する。

鰻の流通の主なルートは、生産者(養鰻場)―生産地問屋―消費地問屋―鰻専門店となっています。活鰻の特殊性をご存じない方は、他の生鮮食品のように問屋を省いた方が流通経路の短縮によって消費者に安く提供できるのでは?と思われる方も多くいると思います。しかし、鰻問屋の持っている貯蔵機能、サイズ選別機能、品質選択機能等は、他の業界の問屋部門では見当たらない特殊な機能なのです。

今回、日本最大級の消費地問屋である株式会社 鯉平の清水亮佑取締役のご好意により消費地問屋の様子を見学させていただきました。

まず、見学の様子をレポートする前に株式会社 鯉平・清水良朗社長の鯉平ホームページに掲載されている社長挨拶がいち消費者としても共感出来るので、引用して皆様にもご紹介致します。

弊社鯉平より鰻をお買い求め頂いている蒲焼商の皆様へ

ウナギという魚の資源枯渇が急速に進んでいます。
思えば、これまで私たちは、利益追求のために無制限に稚魚を捕りつづけ、大自然の営みを壊し続けてきたのかもしれません。

そう考えますと、天然の下りウナギを獲らない、シラスウナギの採捕量に法的な制限を掛ける等、謙虚に資源保護の施策を実行していきながら、完全人工養殖の商業化を待つしかないようです。 今、私たちにとって大切なことは、必要以上に悲観的になって事業を縮小したりしないことです。

「儲かるから」ただそれだけの理由でうなぎを扱っていた業者が、今どんどん業界から去っています。いずれシラスウナギ漁に関わる利権まみれの闇社会も白日の下にさらされるでしょう。業界は今浄化されつつあるのです。そう考えれば、闇の向こうに一筋の光は確実に見えています。

神様は、家業として日本の食文化を真摯に守ってきた皆様方に最後は微笑むと思います。
弊社鯉平は、常に消費地の目線で考え行動します。蒲焼商の皆様のお側でお仕えいたします。

株式会社 鯉平
代表取締役 清水 良朗

清水社長のおっしゃるように鰻料理は、日本の大切な食文化です。鰻の帰る河川の回復や乱獲を防ぐ施策しつつ、獲って養殖して成長させた鰻を無駄なく美味しく食べさせていただくのも資源の有効活用だと私は考えるのです。

さいたま市見沼区にある株式会社 鯉平 本社

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約束の9時少し前に着くとちょうど朝礼の最中で応接室で待たせていただく。
応接室の壁には初代の平八氏が現社長が四代目・良朗氏を抱いている写真がかかっていた。

1897年(明治30年)の創業当時は主に鯉を扱っていたので、初代は「鯉屋の平八」呼ばれており、それをとって鯉平の屋号になったそうだ。

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まず見せていただいたのは、鰻を鮮度高く活かしておくための立て場。
活鰻から割くことにこだわる専門店では店頭なので立て場を設えている店もあるが、これだけの数のポールが並んでいる光景は圧巻ですらある。

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鰻を活かしておくためには、良質の水が大量に必要とする。
活鰻にこだわる専門店でも良い井戸水のある場所に移転したという話を聞くのはそのためだ。

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ポールごとにタグが貼ってあり、品質管理が徹底してある。

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鯉平は鰻だけでなく、川魚全般に扱う卸問屋なのでどじょうもいる。
写真は、ブランドどじょうある「大分のんきどじょう」

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他にもたくさんの生け簀があり、様々な川魚が

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清水取締役が生け簀から掬って見せてくれたチャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)

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こちらは、鯉平の社名の由来である鯉の生け簀。
この日は全て出荷してしまったようで活鯉は見ることが出来なかった。残念!

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冷蔵室には、スッポンが活かされている。
温度を低く保ち、冬眠状態で鮮度を保持しているそうだ。

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鰻のサイズ選別機

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ご覧のように出てきた鰻はサイズごとに選別されている。

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鰻は何尾で1kgになるかでサイズ分けされている。例えば5Pというと1kgで5尾ということなので1尾200gになる。
鰻は、サイズによって味が微妙に異なり、調理方法にも違いが出てしまう。
専門店は、伝統の味にこだわりをもっている店がほとんどなのでサイズ指定をして発注する場合が多い。

食べる側も関東風のうな重の場合は、お重に1尾入っているのが一般的なので目方は同じといっても太物半尾だと納得しない人もいるのではないだろうか?
作る側も太物と細物では蒸し時間や焼く時間に差が出てしったりと効率が悪くなるのは目に見えている。

そのニーズに応えるためにサイズ選別作業は、鰻問屋の重要な仕事なのである。

こうして選別された活鰻は、酸素を注入して鮮度を保った状態で出荷される。

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割き、串打ちの作業場の風景

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熟練の職人さんが見事な手さばきで活鰻を割いていく。

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割いた鰻を串打ち機へ

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注文を受けた店のニーズによって串の位置を微調整する。
串打ち作業も全て自動とはいかないそうだ。

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現在、割きや串打ちの作業も問屋の重要な仕事だそうだ。

「串打ち三年、割き八年、焼きは一生」といわれるように鰻職人は熟練を要する。
熟練の鰻職人が高齢化する一方で若手の職人が増えず、鰻業界は慢性的な職人不足に陥っているそうだ。

職人不足を補う手段として、串打ちまでの工程を依頼が増えているとのことだ。

鰻の資源問題と並んで鰻職人の不足は、鰻業界の大きな課題であろう。
清水取締役によれば、大手の専門店とタイアップして鰻職人を養成する対策も計画していくと時期に来ているとのことだ。

現に最近オープンしている専門店の店主は、鰻問屋で研鑽を積み、専門店で修業して独立という流れがある。
昨年10月に浦和駅西口にオープンした『うなぎ彦星』の中嶋勇志店主も鯉平で長らく研鑽を積んだのちに浦和の名店で修業して独立された。

鯉平では、消費者のニーズに応えるために加工にも力を入れているそうだ。
専門店とタイアップした通販商品のOEMや新たな商品開発にも進出することも視野に入れているという。

また、鯉平の社名の由来である鯉や他の川魚の消費も増やしていきたいそうだ。
鯉も鯉ヘルペス問題以降減ってしまった需要が少しづつ回復している。
食糧事情が欧米化する以前は、特に内陸部では、川魚が重要な蛋白源であった。
和食が世界遺産に登録されたのもそのような事情を考慮されてのことだと思う。
「川魚って臭いんでしょ?」などという方もいるが、きちんと品質管理された川魚は嫌な臭いはしないと断言できる。
是非、賞味していただきたい。

見学させていただいた時間には、多くの社員の方たちは仕事を終えて退社した後だった。
さいたま市から多くの取引先への出荷は午前3時がピークで作業は日付が変わった頃に始まるという。
活きの良い活鰻を各地の専門店へ毎日届けるにはどうしてもその時間になるのだそうだ。

他業界とは違い鰻を扱う川魚問屋は、鰻業界にとって重要な位置を占めているのが見学させていただいてさらに理解できた。
うなぎ大好きをご覧の皆様にも私たちが美味しい鰻を食べるために鰻に関わっている方たち関わっていることがご理解いただけたら嬉しい。

今回、見学の機会を与えてくださった株式会社 鯉平・清水亮佑取締役はじめ快く作業を見学させていただいた社員の方たちにこの場を借りて、心からお礼を申し上げます。

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