谷中 千根や 〜うなぎ三都物語〜

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うなぎの蒲焼の製法には大別して関東風と関東風があるのをご存知の方は多いだろう。

関東風と関西風の鰻の蒲焼は「割き方」と「焼き方」が大きな違い。
関東では、鰻を背開きにして白焼きした後、蒸して再び焼く。
関西では、腹から開いて蒸さずに焼く、いわゆる地焼き。

養殖うなぎが誕生するまでは天然うなぎを調理していたため、いかに柔らかく美味しく食べられるか、工夫がなされていた。

関東では、白入れした後に蒸しの工程を入れるのは現在も引き継がれている。

関西では、焼きの技術でうなぎを柔らかくすることに加え、ご飯の間にうなぎを挟みうなぎを柔らかくする「まむし」がある。まむしの語源は諸説ある。ご飯の間で蒸すから「間蒸し」という説やご飯で蒸すので「まんま蒸し」が転じたという説などなど。

名古屋では、郷土料理の名古屋めしとして定着した「ひつまぶし」があげられるだろう。

関西では、江戸焼きと称して関東風の蒸したうなぎを出す店が早くからある。大阪・江戸焼きうなぎの老舗『吉寅』は創業80年余というから創業当時から江戸焼き一筋なら昭和初期には江戸焼きうなぎが大阪にあったことになる。

このところ、東京でも地焼きうなぎを出す店が増えつつある。

参考:東京都区内で蒸さない地焼き鰻が食べられる鰻専門店

そのひとつに今年の9月新たな一店が加わった。

日暮里駅西口を谷中銀座方面へ進み、谷中銀座へ下る夕やけだんだんの手前を左に曲がる。

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朝倉彫塑館の前で振り返るとうなぎのノボリが目に入る。
『うなぎ 千根や』

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使用しているうなぎは三河淡水グループの「三河鰻咲」のようだ。

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入口を入って左側に4人掛けテーブルが2つ。

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右側に2掛けのテーブルが2つ。

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奥には厨房に面してカウンター席もある。

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「空いているのでテーブル席へどうぞ」と女将さんに言われたが、ご主人の仕事が間近で見られるカウンター席に座らせていただいた。

お初なのでメニューを拝見。

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メインの鰻が、関東風〈うな重〉と関西風〈まむし重〉、名古屋風〈ひつまぶし膳〉がラインナップされ、まるで鰻の三都物語ではないか!
一品料理の中には肝串のほかに頭串、ひれ串、短冊串と酒のアテに最適なうな串もある。

ご主人の福島さんに「充実のメニューですね!」と伝えると
「鰻の修業先で出していたメニューを踏襲しているものですから」と言う。
修業先をお聞きすると、かつて神田にあった『築地丸正』ということであった。

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確かに『築地丸正』には〈関西風まぶし重〉と〈ひつまぶし膳〉があった記憶がある。
福島さんが「いらしたことがあるんですか?お会いしたことがあるかもしれませんね。」と言うので【うなぎ大好き】というサイトをしていると自己紹介をすると「そうなんですか?!」と打ち解けてくださった。

福島さんは『築地丸正』が閉店した後、谷中銀座の魚屋へ移り、満を持して2016年9月に『千根や』をオープンした。

都内でも関西風地焼きを食べられる店が増えたといっても〈まむし〉をいただける店はそうそうないので〈まむし重〉をお願いする。

注文を受けると白焼きまでの下拵えをしてあるうなぎを炭火で焼き上げる。
割き、串打ちは関東風の技で関西風地焼きにする。

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〈まむし重〉の登場!

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あれれ?白ご飯に刻み海苔?
いえいえ、ご飯を除けると中から鰻が!
そう、これが〈まむし〉

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ご飯の中で蒸されることで地焼き特有のジューシーさとふんわりした柔らかさを兼ね備えている。
これで2,600円(税込)というのだから鰻価格高騰のご時世ではコストパフォーマンスは高いと思う。
鰻の量も4P(活鰻で250g)を3/4尾だから小ぶりの鰻1尾分に相当し、十分な量がある。

福島さんは「若い人でも時々は食べられる値段にしたかった。」という。
鰻のサイズも「大きい鰻の方が身が厚くて、食べた!って感じがしますからね。」と笑う。

川魚専門店経営の鰻店で修業を積み、さらに魚店で魚を知り尽くした方が実践しているのだら説得力がある。

次回はうな串で一献傾け、〆にうな重を楽しみたい。
しかも行き着く先はお江戸か、尾張か、はたまた逢坂関を越えるか、楽しみは尽きない。

 

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