京極夏彦という小説家をご存知の方も多いと思う。
京極夏彦のデビュー作『姑獲鳥の夏』の発売直後、分厚いノベルス本に興味を惹かれ購入して読みすすむとその独特な世界に魅了された。以来、新刊が発売されるごとに購入し、書棚の一部はレンガ本といわれる京極夏彦の著作で占領されている。
初の映像化作品『京極夏彦「怪」七人みさき』を観た後に『渋谷松川 本店』や講談社本社であったサイン会の帰りに江戸川橋まで足を延ばし『はし本』で鰻を食べたのは良い思い出になっている。
大ファンである京極夏彦のサインがある『うなぎはす沼』さんへ偶然伺うことが出来た。
店主の蓮沼 等さんよれば、自宅が近くなので来店だけでなく、出前にも行かれるというとだった。
『うなぎ はす沼』さんへお邪魔する切っ掛けは、普段SNSで交流している「浦和のうなぎ日記」の管理人・けいすけさんが正月休み最終日でご家族でいらっしゃるところへ便乗させていただいたのだ。
けいすけさんとは休みが合わずなかなか一緒にウナれないのでご厚意に甘えてさせていただいた。
JR武蔵野線・東浦和駅からけいすけさんに乗せてきていただいたので道順はわからないが、徒歩10分程度らしい。
駐車場は店の裏手に5台分あるということだ。
店内は入口右手にテーブル席、左奥には掘り炬燵式の座敷とカウンター席となっている。
初訪なのでメニューを見せていただく。
メニューの見返しには鰻の現状を記したレジュメが挟んである。
さすが「浦和のうなぎを育てる会」会員なので意識が高いことがわかる。
鰻のサイズを聞くと〈竹〉で5p(活鰻で200g)1尾分ということだ。
まず〈肝焼き〉と
〈ひれ焼き〉が到着する。
〈ひれ焼き〉は、関東風背開きでは鰻のヒレをひく訳だが、うなぎ串専門的以外ではなかなかお目にかかれない。好き嫌いはあると思うが、ヒレの下のコラーゲンたっぷりな旨みを活かさない手はないと思う。
けいすけさんの好物〈う巻き〉も到着。
けいすけさんがニコニコしながら一つ分けてくれるという。
遠慮なく、一ついただくとけいすけさんのニコニコの理由が解った。
玉子焼きが甘いのだ。
その甘さが自分たちが子供の頃、運動会や遠足の弁当に入っている玉子焼きの甘さを思い起こさせる懐かしい甘さなのである。
〈白焼き〉は蒸しがしっかりと入ったタイプ。
脂を落し過ぎずに鰻の旨みも感じられるちょうど良い蒸し加減である。
ふわっとしてクリーミーな食感は関東ならではのものだ。
『はす沼』さんは、注文を受けてから蒸し始めるとのことだから他の料理を楽しんでいるとちょうど良いタイミングで〈うな重・竹〉がお出ましになった。
関東風のふわとろで、少し甘めのタレがほっこりする味を醸し出している。
優しく、懐かしい雰囲気のうな重だ。
店主の蓮沼 等さんは『銀座 大和田 浦和店』で修業したのち、2008年2月に『うなぎ はす沼』を開業したそうだ。
お話させていただくと優しい人柄が伝わって来る。
あの優しく、ほっこりする鰻は蓮沼さんの人柄がよく出ていると納得した。
うなぎを鰻喫している間にかかってくる出前の電話に京極夏彦だけでなく、地元の人々に愛されているうなぎ屋さんなんだなぁとしみじみ感じる。
素敵なご縁を結んでくれたけいすけさんと快くご一緒にしてくださったけいすけさんの奥様、ご子息に心からをお礼を申し上げたい。